音楽ソムリエ

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帰ろう (2020年, 藤井風)

「帰ろう」その言葉に込められた意味、歌詞を解釈すると、レクイエムのように聴こえる、幸せな死とは何か!?

 

心が浄化される・・・

「帰ろう」その言葉の意味するところは?

どこに帰る?そして幸せな死を手に入れるにはどうしたらいいのか?

 

目次

 

『帰ろう』に隠されたテーマ

この楽曲の大きなテーマは、「幸せに死ぬには自分は何を成すべきか?」である。

 

幸せに死ぬために、誰もが毎日もがいている。自分の持っている全てを与え、死を迎えることができれば、それは幸せな死と言えるのではないか…。

 

「帰ろう」とは、死を迎えて土に帰る(還る)、そして残された人が穏やかな日常に帰るという二つの意味があるのだと思う。


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思い出す、ある出来事について

この楽曲を聴いた時に、数年前の悲しい出来事を思い出した。同僚の死だ。それは突然やってきた。数日前まで向き合って昼御飯を食べていたのに…。

 

出張からの帰宅途中に訃報の連絡を受けた。何かの冗談かと思った。上司から送られてきた冷たいメールの一文が今でも忘れられない。

 

近くにいたら何かが出来たわけではないが、無力感が今も残る。死因は、人食いバクテリアと呼ばれる病気で、溶血性レンサ球菌という細菌に感染し、重症化してしまったそうだ。

 

前日から足が痛いと言っていて、夜に様態が急変し、朝には既に意識がなかったそうだ。彼は結婚していて、妻と幼い二人の子どもがいた。子育ては大変だが、幸せだという話を日々聞いていた。亡くなった彼のこと、それを理解できていない子ども達、残された彼の妻、その光景に世界は何て不条理なんだと思った。

 

本人が一番無念だっただろう。それは幸せな死とはかけ離れていたと思う。死にたいと思う人がいる。その一方で生きたくても、生きられない人もいる。

 

普段は考えていないが、自分だけのために生きている人は少ない。世界では何かしら誰かとの関係性があり、助け合っているものだ。親・兄弟、会社の同僚、学校の友達、ペット、家庭や子どもがあると尚更だろう。彼は全てを与えることはできなかっただろうな・・・。

 

未だに私は彼が携わったモノを見たり触ったりすると、「(○○、元気かよっ?)」と心の中で呟くことがある。残されたものにとっては変わらないふりをしているだけで、心の穴はぽっかりと空いたままで、忘れることはない。

 

残された人と死を迎える人

『帰ろう』では二つの対照的な気持ちが描かれている。残された人と死を迎える人、それぞれに向け、レクイエムのような言葉が並ぶ。美しく、それでいて物悲しい、しかし、明日への希望が垣間見える歌詞なのだ。

 

曲のメロディーは壮大で、聴いていると、心の穴が少しずつ埋められて補完されていく感覚がある。落ち着きを取り戻すことができる。不幸を誰かのせいにしてしまう、そんな負の感情は浄化されていく。

 

歌詞

作詞作曲:藤井風

あなたは夕日に溶けて
わたしは夜明に消えて
もう二度と 交わらないのなら
それが運命だね

あなたは灯ともして
わたしは光もとめて
怖くはない 失うものなどない
最初から何も持ってない

それじゃ それじゃ またね
少年の瞳は汚れ
5時の鐘は鳴り響けど もう聞こえない
それじゃ それじゃ まるで
全部 終わったみたいだね
大間違い 先は長い 忘れないから

 

ああ 全て忘れて帰ろう
ああ 全て流して帰ろう
あの傷は疼けど この渇き癒えねど
もうどうでもいいの 吹き飛ばそう
さわやかな風と帰ろう
やさしく降る雨と帰ろう
憎みあいの果てに何が生まれるの
わたし、わたしが先に 忘れよう

 

あなたは弱音を吐いて
わたしは未練こぼして
最後くらい 神様でいさせて
だって これじゃ人間だ

わたしのいない世界を
上から眺めていても
何一つ 変わらず回るから
少し背中が軽くなった

それじゃ それじゃ またね
国道沿い前で別れ
続く町の喧騒 後目に一人行く
ください ください ばっかで
何も あげられなかったね
生きてきた 意味なんか 分からないまま

 

ああ 全て与えて帰ろう
ああ 何も持たずに帰ろう
与えられるものこそ 与えられたもの
ありがとう、って胸をはろう
待ってるからさ、もう帰ろう
幸せ絶えぬ場所、帰ろう
去り際の時に 何が持っていけるの
一つ一つ 荷物 手放そう
憎み合いの果てに何が生まれるの
わたし、わたしが先に 忘れよう

 

あぁ今日からどう生きてこう

 

歌詞解釈

一番の歌詞は残された人に向けて歌われる。忘れられない辛い思いに対して、全てを忘れて帰ろうと。

 

傷は疼(うず)き、ぽっかりと空いた穴は、なかなか回復しないけど、そんなのは吹き飛ばそう!前向きに生きられるようにと。

 

清々しい風が、塞ぎ込んだ心に吹き込み、密閉され淀んだ空間に風が通り、少し晴れやかな気持ちになる。

 

二番では死を迎える人に向け、自分が居なくなっても、何一つ変わらず回る世界、自身は与えてもらうだけで、ギフトできなかった。そんな自分に、生きていた意味があったのか?と疑念をいだいてしまう。

 

自分が死を迎える時には、全てを与えて去る。そんな幸せな死、満足感を得たいものである。幸せな死を得るために、多くの人はもがき、諦めず生きているのだ。

 

あとがき

この文章を書いている時、ふと「辛い」と「幸せ」の漢字が似ていることに気付きました。この二つの気持ちは表裏一体であるのかもしれません。

 

ずっと幸せであれば、幸せ自体を認識することができなくなってしまう。日々の辛さがあると、幸せの存在を大きく感じる。そして幸せであればあるほど、普段の小さな幸せの存在を見落としてしまう。

 

どちらもバランスよく摂取が必要なのかもしれないな・・・。

 

あぁ今日からどう生きてこう

 

音楽ソムリエ

なゆた

 

HELP EVER HURT NEVER(通常盤)

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  • アーティスト:藤井 風
  • 発売日: 2020/05/20
  • メディア: CD