記憶の風化、心地よさと不安を与えてくれる不思議な楽曲!
透き通り浸透する声
穏やかで芯のあるベースラインの心地よさ
きのこ帝国の『風化する教室』
目次
きのこ帝国とは
2007年に結成された4人組バンド。メンバーは佐藤千亜妃(Vo/Gt)、あーちゃん(Gt)、谷口滋昭(Ba)、西村“コン”(Dr)、2012年にDAIZAWA RECORDES/UK.PROJECT inc.よりアルバム『渦になる』でデビュー。しかし、2019年5月にベースの谷口さんの脱退が発表され、現在は活動休止中。
風化する教室
彼らにとって初のフル・アルバム『eureka (ユーリカ)』に収録されている。「教室」という言葉、学生時代の淡い想いが想起される。
若く、青く、不安だ。その時にしか出せない良さがこの曲にはあるのだと思う。そして言葉の言い回しが好きだ。
- 意志のない言葉の羅列
- 意味のない祈りの螺旋
シンプルだけど、言葉の響きが美しく、歌詞に引かれて曲を聴く、他にはない経験をした楽曲であった。
文章を書く人は、いつも意思のない言葉の羅列と格闘しているのだと思う…。
ただ羅列するだけでは意味を持たない。しかし、意思を込めると、不思議に行間に意味が浮き出てくるのだ。単純な単語のつながりがいくつもの意味を持ち、多くのことを想像できるのは面白い。
『eureka (ユーリカ)』というアルバムはかなり尖っている。ジャケットに描かれた獣のような目が印象的である。赤く毒々しい瞳が示すように、挑戦的で、人の見てはいけない心の中を覗き見るような作品だ。
しかし、何故だろう。不安と心地よさを同時に与えてくれる音楽であり、そんな音楽はそうはない。そこが彼らの大きな魅力だと思う。
歌詞
作詞:佐藤
作曲:佐藤
記憶は想いどおり風化する
窓際で、嘘ばかりついていた
記憶は想いどおり風化する
窓際で、きみは外ばかりみていた
深海のね 魚たちは
浅瀬ではね 死んでしまうの
意志のない言葉の羅列
あざ笑う声は遠く
窓際で、きみは息をしていた
記憶は想いどおり風化する
聴こえだす きみの鼻歌のメロディー
深海のね 魚たちは
浅瀬ではね 生きてゆけないの
意味のない祈りの螺旋
あざ笑う明日は遠く
窓際で、きみは外ばかりみていた
意志のない言葉の羅列
あざ笑う声は遠く
窓際で、きみとただ息をしていた
記憶は想いどおり風化する
歌詞の意味
詳細は分からない
でもあまりうまくいってないようだ
暗く沈み生きている、光の当たらない深海の魚は光の当たる浅瀬では生きていけない。何だか暗く不安な気持ちになりそうだが、対照的にメロディーは明るく、しなやかである。
LaLaLaLa・・・
というコーラスは歌詞のイメージとは違い、心地よさ与えてくれる。
風化の意味は
- 地表の岩石が、日射・空気・水・生物などの作用で、しだいに破壊されること。また、その作用。
- 記憶や印象が月日とともに薄れていくこと。「戦争体験が風化する」
風化は自然にやってくるもので、自分の思い通りにはならない。教室の窓際で、外ばかり見ている君、最後には、″きみ″ とただ息をしていたとあり、吹っ切れていないことが伺える。思い通りに忘れることはなかなか難しい・・・。
この楽曲のよさ
やはり不安と心地よさのギャップをバランスよく与えてくれるところだと思う。心地よさの中にある不安感、不思議な魅力で何度も聴いてしまう。
ちなみに『eureka』には尖った曲が多いので是非聴いてみて欲しい。中毒性のある音なのだ。そして、ボーナストラックが付いているアルバム好きだな…。
音楽ソムリエ
なゆた